消化管アレルギーについて簡単に解説したいと思います。
お子さまがミルクや離乳食を摂取した後に、急に繰り返し嘔吐したり顔色が悪くなるなどの体調急変することがあります。これらの症状の背景に「乳児の消化管アレルギー」が隠れていることがあります。医学的には食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES:Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome)と呼ばれます。
消化管アレルギー(FPIES)とは
消化管アレルギーとは、原因となる食べ物を摂取してから30分後〜4時間後に繰り返し嘔吐が起こる病気です。ぐったりしたり顔色が悪くなることが多く、下痢・血便・発熱を伴うこともあります。
じんましんや皮膚のかゆみといった“一般的な食物アレルギーの症状”は現れにくいのが特徴です。原因食物を避けると、症状はおおむね24時間以内に改善することが多いです。
どんな食べ物が原因になるのか
新生児期・乳児期早期にはミルク(牛乳)由来が最も多くみられます。混合栄養や人工栄養の場合に発症リスクが高まることがあります。
離乳食が始まると、卵黄・小麦・大豆などが原因になるケースが見られます。最近では卵黄が原因となるケースが増えていると報告されています。
診断と検査の考え方
診断の主な手段は、原因食物を除去して症状が改善するかを観察する「食物除去試験」です。必要に応じて、医師が管理下で少量を摂取させて経過を見る「食物経口負荷試験」が行われることがあります。皮膚症状が乏しいため一般的な血液検査(特異的IgE抗体検査など)は、消化管アレルギーの診断には有効でないとされていますが、検査をすることでその他のアレルギー症状が出現しやすいかどうかの目安になることもあります。
急な症状が出たときの対応
原因食物を摂取して嘔吐が始まった場合は、次のように判断します。
<自宅で様子を見て差し支えない場合>
1-2回程度の嘔吐で、その後に元気が戻り、顔色が良く水分を取り続けられる場合は、経過観察をしてください。
<受診が推奨される場合>
嘔吐の回数が4-5回程度と多くなり、顔色が悪い、水分が取れない場合は受診してください。脱水の危険がある場合には点滴が必要になることがあります。
<救急対応が必要な場合>
嘔吐だけでなく、ぐったりとして顔色が悪く、視線が合わない、泣き声が弱い、手足の冷えや色が悪い場合は危険信号です。直ちに救急車を呼んでください。
長期的な管理と治療の目安
診断が確定した場合は、原因食物を除去することが基本となります。ミルクが原因であれば医師の指導のもと適切な代替ミルクを使用します。
多くのお子さまは幼児期までに自然と改善します。定期的な経口負荷試験を行うことで、安全な管理につなげられています。
原材料表示の確認、除去食の工夫、調理器具・食器の衛生管理など、日常生活での対応が重要になってくるため、自己判断はせず当院を受診してください。
桜こどもクリニックは、小児食物経口負荷試験認定施設です。

